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三、草・木などの名前にみられる方言

(15) ばっけぁ(ふきのとう)

『秋田方言』では次のようです。

ばっけぁ (鹿・山・南・仙) 蕗の薹。
けぁ (由) 蕗の薹。

横手・平鹿の例がみえません。採集での記載漏れがあったものでしょうか。

この「ばっけぁ」について、くわしい解説は『秋田方言辞典』です。

まず、『雪の出羽路』での紀行家・菅江真澄が天明五年(1785)2月22日、湯沢をたずねたくだりに次の文のみえることを解説しています。

「湯沢に行に、たかやとなる雪やや消のこりて、塘に萌るばかい(蕗の子をいへり) ひこひこ(羊蹄草をいふなり)つみありき、かこべ(ちいさやかの竹カゴを、かこべといふ(略))といへるうつはに、つみありく女むれり」

この文の中に「ばかい」がみえていますが、おそらく、「ばっけぁ」と聞いたものを、真澄は書きことばとして「ばかい」としたものでしょう。いかにも真澄らしい書きぶりです。いまから二百二十年も前のことということになります。

ところで、「ばっけぁ」の語源については、いろいろ諸説があって、『秋田方言辞典』はくわしい解説をとっているのですが、そのなかから、いくつか。

[『山形方言辞典』は「蕗のとうのことを北海道アイヌはマカヨ(makayo)というが、樺太アイヌはパッカイ(paxkay)という。マカヨはバッカイの変化した形と思われる(略)」
[『みちのく植物語源考③』は、青森県南部から岩手県九戸郡、久慈市辺でオキナグサをバッカイ・バッケァ・バッケといっているのに注目し、「オキナグサとフキノトウと同じに呼び名がついているのには、異なる二つの植物にどこか似ている点があるからである。それはオキナグサの果毛の白い毛とフキノトウの小頭花の白くほほけた形である。これを白髪の姿に見立てて゛婆毛ヤ″と呼んだのが変化してバッキャ・バッケアなどと呼ぶようになったと思う」としている]
…そうだとすれば、バッケアは、雪消えの間から出始めるものではなく、春の陽光の中に花梗が伸びて、小頭花のほほけたのどかな姿に由来する名称ということになる]

さすがの考察です。

アイヌ語説も、捨てがたいように思うのですが、“婆毛ヤ”と白髪に見立てたものとする説に軍配があがりそうに思われます。

しかし、フキノトウをアイヌ語でマカヨ、また、パッカイという語の語源的な意味などが、もっと解明されたなら、パッカイ説もうなづかれるものになったでしょう。アイヌ語パッカイも、“婆毛ヤ”と見たてたものとするなら、名付けの共通性がうかびでてくるとなれば、いや、そう思ってみるだけで胸が少しドキドキしてくるのを感じてしまいます。

雪消えに始まる可憐なバッケアのつぼみと、やがて季節を終わった白い小頭花に、自然のうつろいをしみじみと“婆毛ヤ”に見立てた名付けのふかさに思いをはせてしまいます。


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