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三、草・木などの名前にみられる方言

(14) あいこ(みやまいらくさ)

山の学校の春の運動会。体操場でのお昼とか、終わってからの集落ぐるみの一杯飲みでのじゅっこ(重箱)に、このアイコが自慢げに入っていたもの。山の春が、そこに爆発するかのように。シドケ・ホンナ・ウド・カタゴなどのおひたしや和え物・煮物などいっぱい。その中で、アイコは春の山菜の王者でした。

「イラクサより大きいミヤマイラクサは、東北地方では春先に、若苗をすまし汁に、みそ汁、ひたし物、和え物にするが、山菜の最高の味でアイコと呼ばれている。毒のあるフグの料理がおいしいのと同じように、毒草のようにいわれるこのものがおいしいのはなぜなのだろうか。しかし、アイコもイラクサもギ酸を含んではいるが、命にかかわる毒と言うわけではない。」
(『薬草カラー図鑑』)

このアイコが、『秋田方言』(昭和四年刊)に採録されていない。採録者は、山の幸に遠いか、山菜の味を知らなかったからでしょうか。

ところで、たいへんな発見におどろかされてしまったのが、『秋田方言辞典』の、その「あいこ」の項の解説です。

『語源については、
a、「アヰコは多年草の意乎、其葉凋落すれば暗藍色を呈するより言ふ乎」(『日本植物図鑑』牧野富太郎)
また、
b、「和え物材料としての和えコがアイコに転化した」などの説があるが、
c、アイヌ語アイ[ai](とげ・刺)に基づく語で、コは指小辞であろう。ちなみにイラクサ(刺草)もとげのある草の意である。』

アイコの[ai](刺)のアイヌ語・語源説にはおどろかされてしまいます。そのアイコの刺の痛さを知らないのですが、ここの山野でアイヌの人たちも山菜としてアイコを採っていたであろうことを想像すると、はるかな時空を超えて、今、アイコの刺のその痛さを、ふっとこの身に感じてしまうほどです。そのアイコの刺の痛さも知らないというのに。

ああ、山の学校の春の運動会がなつかしい。


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