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四、古語をもとにした方言

(8) のごう

『秋田方言』では、

のごる(平) 拭ふ。 「汚いからのごれ」
のごう(雄) ぬぐふ。 「鼻をのごう」

の二例が示されているだけ。横手地方では(雄勝)の「のごう」のかたちで使われます。それに、「のごえ」のかたちもよく使われるようです。 これは「…しなさい」のかたちで「ぬぐいなさい」の意になります。

『秋田方言』での(平鹿)の用例「のごる」「のごれ」のかたちは今ではみられなくなったと思われますがどうでしょうか。

古語辞典(旺文社版)ではどうでしょう。

のご・ふ[拭ふ]  ふく。 ぬぐう。
  「汗を のごひ て」(字治拾遺三)

次は『広辞苑』。

のご・う[拭ふ]  「ぬぐう」に同じ。
  万20 「涙を のごひ 咽(むせ)びつつ」

「のごふ(う)」のかたちは古語。遠く万葉の時代からの語そのもの。『秋田方言辞典』では次のようです(くわしい解説なので、ここでは要点のみにします)。

のごう/のごる・ぬぐる  拭う。
[ノゴウ](山・雄・由)
[ノゴル](鹿・北・平)
[ヌグル](鹿・北)
≪のごる≫(青森・岩手・山形西田川郡)
≪のごう≫(山形)
≪のぐう≫(山形西田川郡・飽海郡)
≪のぐる≫(山形東田川郡)
≪ぬぐる≫(青森 <『東北』『南部』『山形』>)

「アコノ ガラス 汚ネァガラ、ヨグ ノゴレナ」
「汚ネァ ハデ、着物サ ハナ ヌグルナ」

(考)・のごう[拭](「ぬぐふ」の古形)
−「のごふ」は、「退ごふ」で、「ノク[退・除]」の再活用か。(『日本語語源辞典』) ノゴウは上古語の残存か、しかし、ウ→オの母交はよく行われるので、ヌグウの転化であろう。ノゴルはそのラ行活用化、ヌグウは近世語、ヌグルはそのラ行活用化。

明解です。≪「のごう」は「ぬぐふ」の古形≫だとし、なお、≪「のごう」は上古語の残存か≫としています。古語も古語、万葉からの語であるとしています。

そうすると横手地方での「のごう」のかたちは、「ぬぐう」のそれよりも、ずっと古いかたちを今に残して使われていることになります。

遠く遠く、万葉の人たちが使っていた「のごう」「のごえ」を、現在、横手万葉人も使っているのですから、万葉生き残りの語のひとつといえましょう。


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