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四、古語をもとにした方言

(2) たまげる

 

『秋田方言』では

たまげた(鹿・平・雄)おどろいた(非常な)。
「たまげだ大きいりんご見てきた。」
たまげる(市・平)あきれる。驚く。
「私はたまげた。」

「たまげた」「たまげる」の用例はともに横手・平鹿での分布を示しています。

古語辞典(角川版)では次のようです。

たま・ぎる [魂消る]
肝をつぶす。驚く。たまげる。
気を失う。気絶する。

「たまげる」のもとのかたちを、古語「たまぎる」としています。

そういえば、方言では「雪消える」「雪消えた」での語中の「消える」「消えた」を、[キエル→ケエル→ケル][キエタ→ケエタ→ケタ]のように、[キ→ケ]への音変化をとります。さらに鼻濁音化を加えます。 ですから、「たまげる」「たまげた」は、古語「たまぎる」をもとにした方言といえます。

ところが、天下の『広辞苑』には次のように出ています。

たま・げる[魂消る]
(魂が消える)の意から。非常に驚く。びっくりする。たまぎる。

これには「たまげて」しまいました。これは、天下の『広辞苑』という辞書に、方言がのってしまったというものでしょうか。方言「たまげる」が、なんと、標準語「たまげる」になってしまっているのですから。

やはり、『秋田方言辞典』にたよるしかありません。

タマゲルは近世語の「たまげる(魂消)」に基づくもの。魂が消える思いをする意によるもの。…(略)…タマゲルは、「魂消える」の転。

明解です。<考察> のはじめの部分での用例のなかに、
* 高野本平家−四・「仁平の頃ほひ、主上夜々おびえたまぎらせ給ふ事有りけり] (鎌倉前期)
* 名護記−九 「たまぎるといへり詞如何](鎌倉後期)…があって文献資料はともに鎌倉時代です。とくに鎌倉前期にみられるというのですから、「たまぎる」は古い時代の語ということができましょう。


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