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四、古語をもとにした方言

(7) もよう

『秋田方言』には、横手・平鹿での用例は示されず、次のようです。

もよう(仙)装ふ。 「さあ時間だ。もよって出かけれ。」

「もよって」のほかに、「もよえ」のかたちもよく使われます。

昭和初年代、風呂あがりにユカタを着せられて、土手や川原に乱舞するホタルとりに出掛けたもの。そうしたときに、よくいわれたものです。
「ちゃんともよえ。もよったら帯もしめて。」
「もよえ」は、ユカタとホタルの思い出とよく重なります。

古語辞典をひらいても、この語はありません。ただ、次の語がひとつ。

もよひ [催ひ] モヨイ
準備すること。用意。
その状態になりそうなさま。

「もよう」と「もよひ」の語のかたちは似ているといえます。でも意味は同じといえるでしょうか。

『秋田方言辞典』では次のようです。まず、はじめに「モヨイ」「モヨウ」の項をあげて比較し、そのあとくわしい解説がつづきます。

もよい① 準備。用意。支度。
② 身支度。装い。装束。
もよう装う。身支度する。装東を身に着ける。

「…モヨイは、…「もよう[催]」の連用形の名詞化である。準備する。用意を整えるが原義。……郷土では主として、身支度をする意に用いる。もちろん、その場合により正装する意にも用いる。モヨウは[もよおす(催)]と同源の語。」

明解です。

「もよおす」「もよう」は古語です。古語「もよう」が横手地方には、りっぱに生きていることを示しています。

現在、温泉などに行って、宿でユカタを着るぐらいですから、どうしても身支度も乱れがち。そのうえ、酔うと帯もしめないままの格好で、マイクを握ったりするのを見かねて、
「ちゃんと、もよえ!もよわねばみだぐねぁ!」
と叫ばれたりします。ところが、聞く耳もたずで(「もよう」の語を知らないのですから)意に介せずの風潮には、あきれて開いた口がふさがりません。


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