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四、古語をもとにした方言

(10) ばんげ

『秋田方言』には、そのものズバリ。

ばんげ(全県) 晩。

全県におよんでいることがわかります。古語辞典では次のようです。

ばん・けい[晩景]  「ばんげい」とも。
夕方の景色。
晩がた。ゆうがた。
(「旺文社」)  
ばん・げい[晩景」
夕方。
(「ばん・けい」とも)夕方のけしき。
(「角川」)  

どちらの辞典も、[晩景]としてとりあげ、「ばんげい」と読むことを示しています。「ばんげ」のもともとのかたちは、古語「晩景」にもとづくものということができましょう。

しかし、「ケイ」と「ゲイ」にみられる音交替、さらに、「ゲイ→ゲ」の音のちちまりなど、問題は残されます。これらについて、『秋田方言辞典』はくわしい解説を示しています(ここでも、以下、要点で)。

ばんげ
夕方。
夜。晩。
今夜。今晩。
夕食。

(考)…ばんげい(晩景)[(ばんけい)とも]
夕方の景色。
夕方。夕暮れ。

方言は②の用法に基づくもの。晩は夕方・夕暮れ、転じて夜の意に用いる。同じようにバンゲイは①夕方から②夜・晩の意となり、使い方によって③今夜・今晩の意となる。……④バンゲで夕食の意に用いられるが、この場合、「朝餉」「 昼餉」「夕餉」への類推で「晩餉」の意識がはたらいていると思われる。
(平安末期)ではバンゲイ、室町時代…バンゲイである。
江戸中期以降、景を清音で読むようになったようである。
夕方の景色の場合はバンケイ、夕方の時刻の場合はバンゲイと区別していた。なお室町時代から夕方の時刻のバンゲイはバンゲとも言い、「晩気」の字をあてている。

用例資料が(ここでは示せなかったのですが)なんとも豊富、バンゲの歴史的な変遷が手にとるように明解です。平安・室町といった時代からの古語「バンゲ」であることがわかります。

さきにまとめのように書いた[古語「バンゲイ」をもとにした「バンゲ」…]のそこまではいいとして、この「ばんげ」がすなわち方言であると決めつけられるものではないように考えられます。古語「ばんげ」が、ちゃんと生きてはたらいていると解されていいのではないでしょうか。


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