横手方言散歩サイトロゴ

二、身体部位にみられる方言

(1) おつむ

 

「おつむてんてん」の「おつむ」です。

『広辞苑』では次のようです。

おつむ幼児語。また俗な言い方。「おつむり」の略。
おつむてんてん 幼児が手で自分の頭を軽くたたく動作。
つむり(頭) あたま。つぶり。

天下の『広辞苑』は、<幼児語>としていて、<おつむてんてん> を例示しています。いま、わたしらのくらしのなかで、「おつむ」は <おつむてんてん> のなかにのみ生きているのかも知れません。幼児に対する親の愛情いっぱいの語ですから、いまをなおゆたかに生きているといえましょう。また、生きていってほしい語でもあります。「おつむ」のもともとのかたちは、<つむり・つぶり> とも説明されているのですが、語中の「…む…」と「…ぶ…」との発音のちがいがおもしろいです。

「む」「ぶ」のどちらもくちびるをつかって発音します。ただ、「む」の発音は、くちびるをとじて、鼻にぬけて発音されるのに対して、「ぶ」はくちびるの破裂音です。

杉沢にある、「蛭藻沼(ひるもぬま)」が地元の人たちは「びるもぬま」と発音するのですが、くちびるの破裂音は古い時代の発音を残すとされますから、<つむり> のばあいも、<つぶり> のかたちが古い発音を残すのかも知れません。

つむり(頭)あたま。かしら。→かうべ。つぶり。
(『古語辞典』[旺文社])  

これは古語辞典での説明です。

というわけですから、「つぶり」「つむり」は古語であったことがわかります。古語とは、「ずっとむかしにつかわれていて、いまではほとんどつかわれなくなった単語」(『にっぽんご6 語い』 むぎ書房刊)です。「おつむ」は、いまかろうじて幼児語として生き残っているわけです。方言ではなく古語であったということがわかります。


外部リンク

単語検索


ひらがな/カナ:
区別しない
区別する