二、身体部位にみられる方言
(11) ももた
「ももた」は[股(もも)]のことです。やはり、方言でしょうか。
昭和四年刊の『秋田方言』では次のようにとりあげています。
この「ン」の鼻音の発音は、なかなかデリケートで、それこそあるかなしかかの「ン」であることも多いのですから、ふつうは、「ン」を脱落させて「ももたぼ」ともいったようです。
『岩手西和賀地方の方言』では次のようです。
どうも、もともとのかたちは、「ももたぶ」で、「ももた」は「ぶ」の脱け落ちのかたちといえそうです。それに、「耳たぶ」「けつたぶ」の「たぶら」が原形なのだということがわかります。さきの「けつたぶ」でも見てきたとおり、その「たぶら」は古語。「ぶ」の脱落という転訛のあとが、「ももた」に残っているわけです。「けつたぶ」と同じように、「ももたぶ」「ももた」も古語をもとにした方言のひとつということになります。
『秋田方言辞典』でしめくくります。
○ | ももたぶら・ももたぶ・ももたぼ・ももた |
| | 股(もも) 大腿部。 |
| | [モモタンブラ] | 河・由 |
| | [モモタンブ] | 市・由 |
| | [モモタンボ] | 平 |
| | [モモタンボ] | 平 |
| | [モモタ] | 鹿・北・山・南・市・河・雄
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| …(考) ももたぶら[股臀] 股の肉付きのよい部分。太股。タブラは筋肉のふくらんだ部分。 (…略…) |
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