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二、身体部位にみられる方言

(9) こぶらはぎ

『秋田方言』では、

こんぶら(雄)こむら(腓)。

と、(雄勝)での用例だけで、横手・平鹿の方言としては示されていません。横手地方では、ふつう、「こんぶら」に近い、鼻音「ン」があるかなしかの「こぶら」と発音されるようです。

おとなりの『岩手西和賀地方の方言』では、

こぶらぎぇり  コブラは、こむら(腓)の転。
こぶらぎぇりは、こむらかえり。急に泳いだりした時、こぶらの筋肉がけいれんして、溺死の原因になったりする。

と生活にむすびつけて解説しています。この「こぶらぎぇり」は横手でもつかわれます。ひと夏を川で泳いだものにはなつかしい語でしょう。

「こむら」について『広辞苑』では次のようです。

こむら[腓] 脛の後方のふくれた所。  ふくらはぎ。こぶら。
こむらかえり[腓返り] 脛の筋肉がにわかに痙攣を起こすこと。
ふくらはぎ[脹脛」 脛の後方のふくれた所。  こむら(腓)。

[脛]は <ケイ・すね・はぎ> と読むようですが、[脹脛(ふくらはぎ)]と示されるのには少々混乱しそうになるのをおぼえます。それは、まずおくとして、「こむら」を「こぶら」ともいうし、「ふくらはぎ」の別称も示しています。これは古語なのか。古語辞典では次のようです。

こむら[腓]「こぶら」とも。すねのうしろの肉のふくれた部分。ふくらはぎ。
(「旺文」)  

「こむら」の横手地方での発音は、「こぶら」です。そのどちらも使われるようですから、古い時代の語と、その発音をよく残しているものといえましょう。とうぜん、ともに古語ですから、「こむら」「こぶら」は方言ではないということになります。

別称としての「ふくらはぎ」のほかに、横手地方では「こぶらはぎ」もつかうようですが、はっきりしません。

ところで、この「はぎ」について『広辞苑』では次のようです。

はぎ[脛]膝から下。踝から上の部分。すね。
(「和名抄三」)  

(「和名抄三」)とあるので、古語辞典をひくと

はぎ[脛]ひざから下。くるぶしから上の部分。すね。
(「角川」)  

とあり、

すね・はぎ[臑脛]足のこと。「すね」と「はぎ」とは同じ。
(「旺文」)  

とあるので、これまたびっくり。古い時代はそうだったものかはかりかねます。しかし、「こむらはぎ」をさす場合は、「すね」とは同じではないようです。古語辞典では、[「すね」と「はぎ」とは同じ]としていますからそれにしたがわざるをえないのかも知れません。


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