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二、身体部位にみられる方言

(2) なずき

『古語辞典』では「なづき」です。
『広辞苑』では「なずき」です。

古語であることがわかるのですが、横手地方では、「なずぎ」「なんじぎ」などのように語のおわりの音を濁音化して発音します。音変化をとった「なずぎ」「なんじぎ」は方言といえましょう。まとめていえば、出身を古語とする方言のひとつということになります。

ところで、「なずき」を「ひたい」ともいうし、また、「おでこ」ともいうのですが、意味上では大きな違いがみられます。まず、古語辞典からみてみましょう。

なづき[脳・髓]脳髄・脳蓋などの古称。
頭。
(「角川」)  

なづき[脳・髓]脳髓・脳・脳蓋などの古称。頭脳の事。
頭。
(「旺文」)  

古い時代に使われていた「なづき」の意味と、現代での意味とは大きく違っていることがわかります。古い時代は「脳髓」、または「頭」を意味し、現代は、「頭」の一部分を意味して、「おでこ」と同義です。

ひたひ[額]  ヒタイ
顔面の上部。まゆの上。
(「旺文」)  

ひたひ ヒタイ [額]
顔の上部。おでこ。
(「角川」)  

現代では、「なずき」は、「ひたい」「おでこ」と同義です。こうした事情を、『秋田方言辞典』では次のように解説しています。

なずき
……(考)脳髄。主に頭蓋骨内の脳髓を指すが、骨髓を指すこともある。(略)
頭頂部。
あたま。

……もとは頭蓋骨内の脳髓を指したが、頭頂部を経て、頭全体を指すようになった。現代共通語においてナズキは①②③いずれの意でも用いられないが、方言では③およびその転義が残存する。郷土の方言では額を指す。

広く秋田方言では「なずき」は「額(ひたい)」を意味するとしています。 もともとの意味の時代的な変遷がわかりますが、そうした推移のなかで、形容的に少し出っ張っている…とみたてた「おでこ」の語が、いつ頃生まれたものなのか、興味深いものがあります。

現代、「おでこ」には幼児語的なニュアンスが感じられるのですが、幼児と親とのあったかい対話から、そのものズバリの「おでこ」の誕生を想像したりしてみると、思わずほほえましくなります。


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