一、くらしの中の方言(10) しまぐたで……『秋田方言』では次のようです。
横手では、このかたちのほかに、「しまぐ・たで・せねぁ」「しまがぁ・なねぁ」などもあります。これは「しまぐ」の語の次に、「たて(で) 」が入ったかたちに、「せねぁ」がくっついたもの。「せねぁ」は「…することができない」の意。「しまがぁ」は「しまぐ」の「ぐ」の音変化によるもの。
古語辞典では、まず、この「しまうく」に目がいくのですが、『秋田方言辞典』は、これをとっていません。古語辞典にあるもうひとつの「しんまく」をとっているのです。
『広辞苑』も、これと同じ。
「しまぐ・せねぁ」の「しまぐ」のもともとのかたちは、「しんまく」であることがわかります。耳なれない語ですからびっくりです。古い時代からの語にちがいありません。『秋田方言辞典』では次のようです (くわしい解説ですので、ここでは要点のみ)。
「シマグタデ ナラネァ」の語のかたちが、ようやくみえてきた感じです。江戸語の「しんまくに負(お)えぬ」がもともとのかたちということもわかります。「シマグ セネァ」「シマガァ セネァ」とも使われるかたちですが、「シマグタテ(デ)セネァ」のかたちも使われます。 この「…タテ」について、『同書』では次のようです。
「シマグタテ・ナラネァ」のかたちが「シマグタテ・セネァ」(…することができない)のかたちをとることもあります。 この「…タテ」のつかわれる語はほかにもあります(『同書』より)。
意味・用法は少しづつ異なるとしても、わたしらの日常のなかに、たしかに生きているものばかりです。方言のかたちでは次のようなものがあります。
この「しまぐ・たて…」の道も、はじめっから迷い道で、ようようもとの道に出られたかっこう。途中、ほんとうに、「しまぐ・たでせねぁなぁ」と思ったりもしたところ。これも『秋田方言辞典』に助けられてのこと、またまた元気をとりもどしました。方言散歩の道にとって、この辞典は元気のでる一書です。 |
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