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五、平鹿方言考(細谷則理著)を歩く

(3-5) 平鹿方言考を読む
  <第九章> 接続詞


* 注⑫


第九章は「接続詞」の考察。

ここでも文語「故に」からの転訛の例から始まりますが、以下簡単に、もとの語と、その方言とを対比させてわかりやすくしたのが次の表です。

 (もとのかたち) (その方言のかたち)

故にエャテ − ハ
然らばスタラ(「ば」の抜け落ち)
そうであらばソダラ → フダラ
(スタラバ・ソダラバ・フンダラバ)
セバ
然れどもスタドモ・ソダドモ
さりながら
そうであるかソーダガ
さにさりながら
それはそうであるがソレァーソーダガ
それはそうであれどもソレァーソーダドモ
それ故にソンダカラ
するとユード


現代のわたしらには、もう理解できないものもみられるのですが、なんとか理解できるものをいくつか取り上げてみたものです。

「それ故に」をもとにした方言「ソンダカラ」を例示していますが、横手地方ではもうひとつ、「ソダエンテ」「ンダエンテ」があります。いまではこのかたちもあまり使われず、「ソンダガラ」「ンダガラ」が多く使われるようになっています。

いくつかの転認をくぐりながら 「ンダガラ」のかたちになったわけです。そのもともとのかたちが、「それ故に」の文語であったことを考察しているわけです。

もうひとつ。いま、「然らば」とつかうことはないのですが、ここでも「ば」の脱け落ちで、「スタラ」(シタラ)のかたちは日常よく使われます。さらに「セバ」への転訛もあとづけています。

この「セバ」で思いつくことがあります。子どもの手まり唄のなかに、「セバさ…センバ山にはタヌキがおってさ」のあったことを思い出します。「然らばサ」では子どもの唄にはなりません。「セバさ」がよく似合います。横手だけの方言ではなかったこともわかるというものです。

こうみてくると、接続詞にみられる方言のもともとのかたちは、その多くは文語(あるいは古語)にあったことがよくわかります。方言のかたちが、突然に生まれ出たものでなく、その多くを文語、また古語にみられることを『平鹿方言考』はするどく解明しているといえましょう。しかも、明治年代に「独学力行」、これだけの方言研究の実績には、ただただおどろかされるばかりです。方言研究の、まさに金字塔のひとつといえま しょう。

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