三、草・木などの名前にみられる方言(4) いわしばな (たにうつぎ)
と詠まれるのがウノハナです。『薬草カラー図鑑』では≪ウツギ≫の項に、この花をあげています。
なかなか、うがった解説といえます。ユキノシタ科であり、「雪のように白い小花をつける」というウノハナの清楚な姿を、よく伝えます。 ところで、『秋田方言』では
の一例のみ。用例に示される「はこねうつぎ」はどうもあやしい。ふつう、タニウツギを指すとされるのですから、その両方を『広辞苑』で確認すると次のようです。
横手・平鹿でいう「いわしばな」は、どうみても <たにうつぎ> です。 気になるのは、≪ウノハナ≫はユキノシタ科、≪はこねうつぎ≫も≪(たにうつぎ≫もスイカズラ科というのはどうしたものでしょう。気になるところです。 『山内村史』の〔植物〕の項では次のようです。
≪ウノハナ≫談義はひとまずおくとして、≪タニウツギ≫は <スイカズラ科> であることはまちがいなしです。『同書』の生活に即した考察のふかさはさすがです。 ところで、『秋田方言辞典』では、≪いわしばな≫の項に、ウツギの両方をあげて考察しています。(要点のみ)
解説の終わりに、[→がざ]がみえます。そういえば『山内村史』の <タニウツギ> の項にも[ガザ]がありました。おやっと思い、『秋田方言』をさがしてみてみると、
この一例がみえます。『秋田方言辞典』では、「ガンガ」「ガサ」「ガンザノキ」…の方言分布を記述、≪タニウツギ≫・≪ハコネウツギ≫の別名としているようです。そういえば、どこかで聞いたことのあるような気もするのですが、横手ではあまり聞かれない方言です。郡部の方言なのかも知れません。 少し、歩き疲れました。終わりになりますが、「いわしばな」の「いわし」がどうも気になってしかたありません。『広辞苑』をひくと、「鰯(いわし)は秋が旬とされ」とあって、花の時季とあいません。となりにある“いわし鯨”の記述のなかに「…春、日本近海に来て、イワシと共に回遊し…」とあるので、この“春”の時季をいうのだろうと納得したのですがどうでしょうか。 わらび採りのころ、山に入るとピンクがかったこの花が出迎えてくれます。山菜の季節到来を歌うかのように。山ふじの花も咲きますが、道にあふれ、山いっぱいに咲くイワシバナの景観はみごとなものです。 |
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